バイコフの世界に酔って

バイコフの世界に酔って

「オオワシ」

冬鳥として北日本の海岸に渡来するオオワシは翼を広げると2メートル半もある。

北海道の知床半島には特に多く集まるので、その姿見たさに毎冬のように羅臼を訪れることになる。

海岸に迫る断崖に立ち並ぶ巨木の枝や流氷上に止まる鷲を、一日中歩きまわって、たんねんに探すのがとても楽しい。早朝や夕刻には、急峻な原生林の雪の斜面に、エゾシカの群れが出現して、自然の舞台が一段と豪華になることも稀ではない。そんなときふと昔読んだロシアの作家バイコフの「北満の樹海と生物」なんぞを思い出したりして、吹雪のなかで震えながらも結構ロマンチックな気分になる。

その日の宿の泊り客は僕ひとり。

凍えた手足を胃袋ごと暖めようと、楽しみの夕飯時、酒はうっかり前夜に宿の主人が飲み干してしまい、凍結した道路を買いに行くこともできないと謝られた。・・・。

うーん「何がロマンチックだ!鷲にさらわれてしまえ!」

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恐るおそるのUターン「イナゴ」

水平な場所に居るイナゴは近づくとぱっと飛び去るが、垂直の葉や茎に居るイナゴは近づくと気配を感じると、ススッと裏側に隠れます。意地悪をしてその裏側を覗き込むと、彼はそのまた裏側へ回り込みます。

あたかも幼児を相手にかくれんぼごっこをしているようで私は秋の田んぼでよくイナゴと遊びます。

イナゴは稲の害虫として有名ですが、農薬の普及で、ある時期水田からほとんど姿を消しました。商売がらイナゴの標本が必要で、採取をするのは水田に接した林縁や川原の草むらでした。再び水田でイナゴと遊べるようになったのは20年ほど前からです。

食生活の安全性、農業者の立場、生態系の保護保全。

イナゴのUターンは何を意味しているのでしょうか。

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ホタルのお部屋「ホタルブクロ」

 6月から7月にかけて林道の縁や草原に咲いているキキョウ科の花で、花色は白色から濃い赤紫まで変化がある。

昔、下向きに付く提灯形のこの花の中にホタルを入れて遊んだので、それが花の名の語源との説や別説を唱える人もいるようだが僕自身は実験したことが無い。

植物分類学の大家、長田武正博士はある書の中でホタルを入れて遊んだ経験を書いておられ「この遊びがこの名を生んだのか、それともこの名が子供にこの遊びを教えたのか」と結んでいる。いずれにしろ自然と遊ぶ夢のある話で楽しくもうらやましい限りだ。

ホタルの明かりが灯された花の風情を想像したついでに、入れられたホタルが見た室内の景色を確かめたくなった。結構きれいなカーテンが下がっているではないか。

「ホタルブクロ」〔サイドメニュー生きもの名鑑をご覧下さい。〕

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ちょっと裏を見せておくれ「コヒョウモン」

 蝶のなかまにヒョウモンチョウというグループがある。ヒョウモンは豹紋の意味で、その名のように橙黄色の地にたくさんの黒い斑紋が並んでいる。

日本におよそ20種類いて、どれもが大変よく似ているので、山で出会ってもなかなか区別が難しい。豹柄(ひょうがら)のおもてに比べて羽根の裏側の模様はそれぞれに特徴があるので、これが同定の良い手がかりとなる。

7月の初旬に花を求めて北アルプスの唐松岳に登った。大糸線の白馬駅からバスで八方入り口まで行き、登山リフトを乗り継ぎ八方尾根を経由して登るのだが、歩きやすい上に絶景が絶えないルートだからとても人気がある。

リフトを降りて間もない時、まず最初に出会った蝶がコヒョウモンだった。朝の気温の低い時間帯であったため動作が緩慢で、そっと指で触れてみたが飛び立たなかった。

「コヒョウモン」〔サイドメニュー生きもの名鑑をご覧下さい。〕

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流木に生命を宿す歌声「ミソサザイ」

鬼怒川の最上流にある、日光沢温泉を訪ねた。

沢沿いにたどる路は歩きやすく整備されているが、長いこと僻地であったことが幸いして、その景観はとてもよく残されている。途中でサルの群れに出会い、キツツキの巣作りを間近に見る事もできた。

沢のほとりで湯を沸かし、のんびりと朝の食事をする。
周囲には白骨と化した流木が思い思いの造形美を競っている。ふと、流木や根塊に魅せられた知人のことを思い浮かべた。
「彼には枯死した木の泣き声が聞き取れるのかな」そんなことを考えているとき、流木の一端にひょいと現れた小さなミソサザイが、胸を張り、オペラ歌手のように壮大に美しく囀り始めた。

〔松原巌樹の「生き物」名鑑を参照ください。〕

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人なつっこい青い鳥「ルリビタキ」

ほぼスズメ大の美しい野鳥で、北海道の平地から本州・四国の高い山地で繁殖するが、冬になると本州中部以南の低山や平地の林に移動して越冬する。

岩や枯れ枝にとまって、細かく尾を振っていたり山道の地面をちょんちょんとあるきまわっていたりして、わりと人を恐れない鳥ゆえ、間近で観察するチャンスも多く何よりも彩りの乏しい冬の林間でのバードウォッチングで、瑠璃色の姿を見る事はことのほか嬉しいものだ。
普段はあまり雪の深い場所では見かけないがたまに低
山が雪化粧をしたときにはこんな様子にも出会える。

絵は雄で雌は背面がオリーブ色で尾羽だけ淡い瑠璃色をしている。

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千・万の群れをなす「アトリ」

鹿児島県出水地方には、毎年冬の訪れとともに
8000~9000羽のツルが越冬のために飛来します。

その大半を占める6000~7000羽はナベヅルで、これはなんと地球上の同種がほとんど此処に集まっているのです。


ここ出水では他にもたくさんの種類の野鳥を見る事が出来ます。
私が始めて出水を訪れたとき、刈り取られた水田で何千羽という「アトリ」の群れに出会いました。

真っ黒な楕円形の群れは飛ぶ方向を変えるとたちまち細長く形を変えたり丸くなったりしながら私に近寄ったり遠ざかったりしていました。
翌日、木の枝にとまる「アトリ」を間近でしっかりと見る事が出来ました。

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都会にいる「山鳩」

羽の模様がキジの雄にいていることからキジバトと名づけられたようだが、公園や神社に群れているドバトに対してヤマバトと呼ばれることもある。

市街地の公園などでは、あまり人を恐れずにドバト顔負けにえさをあさるものさえいるが、人の住まない山奥や離島、海辺などかなり広範囲に分布しているということは、人間から出される餌をあてにしているスズメやハシブトガラスに比べ、もっと自活能力があるともいえそうだ。

実際ありふれたハトながら山中で出会ったときは、その美しさと野性味に胸がときめき、ヤマバトの名がふさわしいと思う。
 
一年中いる留鳥で、ハトの巣は春の季語になっている。

〔松原巌樹の「生き物」名鑑を参照ください。〕

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日本の空に戻す夢「朱鷺」

2004年9月、日本文理大学の計らいで中国の洋件を再訪する機会に恵まれた。前回が1997年だから7年振りである。
目的は野生の朱鷺を観察することで、そこは地球上で唯一の場所なのだ。冬から初夏に亘る繁殖期の奥地への立ち入りは禁止されているが、その時期を過ぎて里に降り何ヶ所かのねぐらに集まる頃から見ることができるようになる。
観察の時間は早朝に餌場に向けて飛び立つ瞬間と日没間近に帰来するときである。
前回は最大12羽を確認し、今回は103羽を数えることができた。
朝夕の光に映える朱鷺色の舞姿にうっとりしながら、個体数の増加を喜ぶ一方で環境の維持管理、観光資源化やそれに伴う人々の暮らしや思惑の変化等々これから考える事柄をたくさん持ち帰った旅であった。

〔松原巌樹「生きもの」名鑑を参照ください。〕

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